2009/04/16

レポート:陣痛、分娩(出産)の痛みを文章化してみる

鼻からスイカが出るような。とよく言われる陣痛、分娩の痛みの解説を試みます。
まず、鼻の穴を押し広げてみてください。痛いですね。しかしこの痛みは皮膚にかかる負荷の痛みであって、鼻や顔など上位の部位に波及しない痛みです。
というわけでこれは分娩の痛みを表せません。
分娩の痛みの中心は子宮口と呼ばれる部分を中心に広い範囲で展開します。子宮口は膣の終点で、高さ位置は尾てい骨のあたり、深さは体の中心あたりです。
ここが次第に開いて行く際感じるのが陣痛です。鼻スイカを想像していた方は、おそらく膣そのものがぐわっと広がるのが痛いのではないか?と考えていたと思いますが、子が膣に到達する頃は脳で何か出るのでそのあたりの痛みはほとんど感じません。その程度は麻酔なしで膣の下から肛門までの部位をメスでスカっと切られても何も感じないほどです。痛いのは、腰周辺の中身です。痛みの段階をレベルに分けて解説しましょう。

レベル1:陣痛スタート
この頃は「おなかを壊したかも?」という程度の痛み。胃の周辺から下っ腹にかけて違和感を感じる。子が中でぐるぐる回りだすので陣痛かな?と感じる程度。
断続的な下痢の症状に似ている。「いてー」くらい。

レベル2:子宮口5センチクラス
「いてー」が波を伴って続くようになるので、陣痛であることがわかる。この頃から腰のあたりに注意していると、骨盤がリアルタイムでゆっくり開いて行く様子が感じ取れる。SF映画で地上の要塞からメカが出動する部分の「ひらく」かんじに似ている。ちょっと開いては休み、またちょっと開いては休むという状態。骨に痛点はないので骨そのものに痛みはないが、周囲の筋肉と密接している神経に直撃。非常に痛い。つるはしを持った屈強な人が交互に腰をぶん殴り続けている状況を想像してほしい。男性であっても普通曲がらない方向に体を少しづつまげて矯正されたら痛いと思うが、それを自分の意思でなくやられている状態がこれ。ただ陣痛は骨が開く間は痛いが、それが中断すると夢から覚めたように痛みが消失するのがポイント。一気にやったら死ぬから。という神の配慮はありがたいが、おかげで痛みに慣れるということが出来ず「あれ、終わり?なんじゃーらーうおー。終わり?なんじゃーうらあー」が何時間と続く。まだ中の痛みよりも骨周辺の痛みが中心の時期である。

レベル3:破水→分娩へ
痛みの間隔が5分を切ったくらいで病院へ。クールダウンの時間が減ってきているので辛いのと、痛みの質が変わってきているのでこのあたり分娩行程中ハイクラスの痛みに見舞われる。レベル2では腰回りにわたる広域の痛み&ピンポイント腰壊しの痛みだったものが、レベル3になり子宮口そのものに痛みが集中しはじめる。
この頃子宮口の開き具合は直径5センチ程度。恐らくレベル2までは母体のほうが子を押し出す手伝いをしていた段階だが、レベル3は子が穴を主体的にこじ開けてきてるという雰囲気。こじ開け中の穴の周囲にはまるはだかの神経がぎっしり張り付いていると思われ、穴が拡張されるたびそれが猛烈に刺激されている感じである。
その痛みはレベル2で「うーん」とかいいながらも歯を食いしばっていればやり過ごせる類い。しかしレベル3は本当に「ごっごごごごがー」と声が意思と関係なく出る。テレビドラマで「う〜ん」といいながら分娩台にいる描写があるが、あれはうそ。本当は「ぼえー」とか「うわあああああ」である。また、周囲の音も次第に聞こえなくなってくる。
ここで1つ辛いのは痛いからといって四六時中体をこわばらせることができないこと。というのも子が動くのは痛いときだけであり、一瞬でも陣痛が収まった時はだらっとリラックスしていなければならないのだ。痛みの余韻で腹に力を入れていると筋肉が固くなって子が次のアクションを取りにくくなるかららしい。分娩中だと膣で子を窒息させるおそれもあるため絶叫しても次の瞬間は「力抜け!」と助産婦さんに怒鳴られることに。

継続時間に個人差はあるが、出産の全行程で妊婦を襲う痛みはだいたい前述のとおりである。
筆者は分娩直後から痛みはあっさり引き、子をみて「うおーすごい!なんすかこれ」と軽口を叩けるくらい何事もなかったような状態になったが、その後医者が「胎盤くっついちゃってんなー」とかいって人の子宮(内蔵)にピンセットをつっこんでごりごりこそげとったのさえ「まじすか?アハ。いてー」という程度に感じた次第だ。
レッツ!分娩!