2009/07/14

本:原色日本蝶類図鑑

夏は、虫のなまえを調べる機会の多い季節であります。
夏は虫。ということで、古本屋で購入した横山光夫の原色日本蝶類図鑑を、時間があくとしらべものがなくても読んでおります。
蝶好きな人なら常識でしょうが、黒く大きなアゲハチョウはみな一様に「カラスアゲハ」というわけではないんですね。おながちょう、みやまからすあげは、など、数種類があります。
とくに「じゃこうあげは」という種類は尾がながく、羽の形が複雑で迫力があります。そんなじゃこうあげはの本書の解説が凄い。以下抜粋。

長い尾状突起を振りながら、そよかぜにのって緩慢に、樹間や路傍の花上を舞う姿は「山女郎」の名のごとく、絵のような、美しさである。
<中略>
蛹は「お菊虫」と呼ばれ、後ろ手に縛された姿にも似て「口紅」に似た赤い斑点さえもひとしお可憐である。

じゃこうあげは、別名、じょろうあげはの説明であります。
女郎とは、美しい女性全般を指しますが、ここではもっとこう、関わったが最後道を踏み外しそうな、圧倒的性の芳香を放つことばになっています。
蛹のくだりにある束縛された女の姿と合わせると、ほとんど谷崎潤一郎の世界です。

山から降りてきた1頭の蝶にひもづく情報量が、その蝶を見た人間の感性によってこれほどまで大きく増幅するものか。
ことばの個性とは、やはり、世界をみる心の個性そのものなのでしょう。
しかし心の個性って、いったいなんでしょうか。自分にとって何が大切かをよく知っているってことでしょうか。

3 件のコメント:

Hiroshi さんのコメント...

とても面白いです。
その後ろ手に縛られた的な表現に目くじらを立てることなく、そのまま出版されているところに、大らかさと、文化の豊さを感じます。

Yano_Rin さんのコメント...
このコメントは投稿者によって削除されました。
Yano_Rin さんのコメント...

あれまちがえた。けしちゃった。
Hiroshiさん
コメントありがとうございます。
手持ちの奥付けによると、初版が昭和29年、翌年に四刷とのこと。いわれてみれば現代では、目くじらを立てられそうな表現ですね。しかし、アゲハの蛹のもつ、華奢な女の肩甲骨のような突起を説明するにはこれ以上ない記述ですよね。虫好き少年のこころのふるえまで伝わってきそうです。