表題の新書を読んだ。面白かった。
基本的にはWeb制作業務に携わる人間にとって参考となる内容の書籍と受け止められるかもしれないが、他のメディア制作に従事する人や、ビジネスパーソン全般にも届く部分はあるとおもう。
なんせ、他の業界と事情が違いすぎる。
テレビ業界を例に考えるとだ。その世界に従事する友人の話などを参考に考えても、現場の人間が主体的に「現場で起こっているよしなしごとを、そこはかとなく語り合う」とか「立場にかかわらず討議し合う」という状況は非常に珍しい。構造上の違いはあるにせよ、指示する人と作る人、受注者と発注者がいるという意味では仕事の形態はほぼ一緒といえる業界で、ディレクターとかプロデューサーが「視聴者のためになにができるか」という命題を、肩書きや局という枠を超えて座談した記録を私は見たこともきいたこともない。
記録したって需要が無いだろう。という意見があるかもわからんね。
また、局の社長クラス同士が、放送ホニャララ委員会とかで局を超えて話し合った結果が、ごくまれに新聞なんかに載ってるのを見ることもあるね。
しかし、それとこれとは違う。この本、売ることはそれほど重要視してないんじゃないかなあ。売れなくて良いと思って出しているように見えるのではない。記録してまとめることがまず大事だという気持ちが伝わったということだ。ほんとに記録だもの。ドキュメント。現場。という感じの。
これは「しゃべりやすい立場になってからしゃべる」という、「鼎談 放送と文化の明日を考える」ホニャララ委員会にて。では絶対に見えてこない、頭フル回転させて考え抜く人間たちのドラマだわ。
そもそもメディアってその流れに関しては「大本営発表」からたいして変わって無くって、マスメディアっつうくらいだから上流から下流という方向があって、現場もそれと同じ動きをするものだ。でもつくづくWebは関わる人間すべてが主体的に思考する現場なんだなあ。「メディア=あなた」というオピニオンは全然新しくないけど、「メディア=あなた」の世界で仕事を続けるにはどんな立場にあっても「思考を続けること」がいかに基本であるか、この本で再認識した次第だ。でもこれって広く一般に求められるアビリティかもしれんよ。専門用語が分からなくても(けっこう詳細な解説付き)、仕事に対する取り組み方の参考になるはずだ。