2013/11/04

脅威の洛中洛外図観てきた

東京国立博物館の京都展、洛中洛外図の前期展示が今日までなので朝、仕事前に行ってきました。
特に、狩野永徳による国宝「上杉本」が今日で入れ替えです。普段は米沢市上杉博物館にあるので興味のある方は是非。
洛中洛外図というのは「手描きの京都ストリートビュー」というか、小高いところから京都を俯瞰して描写した屏風絵のことです。桃山時代に朝倉家が最初に発注してからというもの権力者の間でもてはやされ、現存する作品は7点。京都展ではその全部が展示されます。
6枚折れ2セットで1組の屏風に異常なまでの執着心で京都の建造物、風俗が細部にわたって描きこまれており、上杉本に至っては2500人も人間が描いてあるとか。

屏風絵はネット画像なんかで観るとわかりますが、しろうと目にも建物がなんとなくやや後ろに引き倒れたような、俯瞰図のはずなのにアオリ構図っぽく見えてしまう特徴があります。これはたぶん屏風絵がもともと座って観るものであるために、見上げる視線に合わせて描かれているからだろうと想像します。
あと、よーく観ると屏風のエッジの折りの角度と、描かれている建造物の軒のラインの角度とがびたっと合わせてあるのもわかります。この点に注目すると、軒などの横の線と、柱などの縦の線とがグリッドをなしているのが見えてきて、平面図であるはずのモチーフがグリッドごとに立ってくるようにみえてきます。絵というよりも、屏風というモノの機能も込みで計算して作ってるのが洛中洛外図のすさまじいところ。室町時代からエグゼクティブは、高層階にオフィスを構えて、窓の大きい自室から都会を見下ろすような気分に浸りたかったんですね...。

ところで京都展の個人的な目玉は二条城二の丸御殿大広間四の間の「松鷹図」がまるっと展示されてるところです!
狩野探幽の豪快な筆のうなりもきこえんばかりの迫力であります。わたしはガチガチの形式美を自ら作り、表現上の制限と個性の発露を高次元でせめぎ合わせる狩野派のなかで「オラオラオラー」と、かたをやぶる探幽が最高に好きなんですが、今回松鷹みてはっきりわかったんですけど、探幽の筆は井上雄彦によくよく似てませんでしょうか。妙心寺の龍雲図的な作品、そろそろ井上さん描けるんじゃないでしょうか。

全国のお寺さん、是非ご検討ください。

おまけ
もう1つ洛中洛外図の面白いところは、大きい作品だと作るのに10年くらいかかっちゃうところ。1つの画面構成に異なる時間軸を継ぎ接ぎしているわけですね。そう考えると、同一人物だけど3回出てくるとか、最初出てきたときは赤ちゃんだったけど次は小僧。とかありそうです。



やだ!ほんとに描いてる!!と全世界が驚嘆してもおかしくない。