2006/05/17

DIATONE

九段の三菱電機エンジニアリング株式会社に併設のe-plazaにて、ダイアトーンスピーカーシステム「DS-MA1」の試聴会に参加した。本製品は2005年12月22日より受注、販売を開始している。2006年4月からは東京と京都の2カ所に試聴室を設けて試聴会を開いており、製品のウェブサイトからだれでも参加申し込み可能だ。約束の時間に試聴したいCDを持参するのも良いし、試聴用に用意されたSuperAudio仕様のCDを聴いてもよいだろう。
試聴会の感想を書いておこうとおもうのだが、別に自分自身オーディオマニアでも何でもなく、どちらかというと市販のコンポで十分というタチなのでオーディオ談義を展開することは不可能である。というわけで簡単にいうが、すごかった。
何がすごいって、今のCDのエンジニアリングがだ。無論、エンジニアリングの技巧を目(耳)の当たりにするにはスピーカーシステムの性能は前提条件なんだが、そっちのほうよりCDという製品、ひいては今のアーティストの技術に対する意識の高さにびっくりしたのであった。音に立体感があるとか左右に振れるなどというのは想像しやすいと思うが、もっと細かい、ビジュアル制作にたとえれば、色の点1つ1つの配置まで意図的にコントロールして世界観を作っている手間な感じ。といおうか。それがいかにも「きれいに聴かせる」とか「聴く人をびっくりさせる」というケレン味の押しつけが目的なんでなく、アーティストの自信とか、音楽に対する愛情やら執着といった圧倒的クリエーティビティの力として届くのがすごい。高品質オーディオのある環境ではよく言われる感想ではあるが、おいおい、こんな(コンセプトの)曲だったのかよのひと言であった。
視覚情報と音情報は、なりたちも用途も違うのでいちがいに比較するのは難しいとは思うが、音もビジュアルもわけへだてなく扱うコンピュータの世界にあって、表現を支える技術について、そのコンセプトを司る側(たとえばデザイナーとか)が「よくわかんない」ではもう、表現とか制作という行為自体無理だな。と痛感した。それらしいことは常に考えていたが、この機会にそれを実感した形だ。
あと、デジタル技術はこの先なんぼ進化しようと、現実の人間の行為やそこから導かれる体験を超えることは絶対無いな。どこまで行っても疑似体験。DIATONEくらいになると製作工房の苦労やオーディオ機器収集に懸けた熱意などの身体感覚を伴った行為が「場の質」をもたらすし、生演奏では絶対に聞こえない音まで拾う(あるいは拾った、取り入れたサウンドエンジニアリングが届く)という意味では立派な「実体験」であるが、入手と再生が手軽であればあるほど、その音はちらしの風景となんら変わらんと言い切れる。