現在までの思い出と謝辞
ごぶさたしております。
10月いっぱいをもっておよそ10年間勤務したバイドゥ株式会社を退職します。
キーボードアプリSimejiのMAと同時に雇用されたのが2011年。ダウンロード数が累計100万を超え、足立と私の二人だけで開発を続けていくのも難しくなってきたタイミングのことでした。当時まだ新しかった「スマホ」のアプリを作ることに夢中になりいろんなことを試していたのが昨日のことのようです。
入社してから初めて開発チームに会いに行った深センは今みたいな未来都市じゃなくて、麦わら帽子を被ったおばさんが路上で鴨や鶏(生体)を売ったり、その場でお湯で煮て羽むしってさばいているようなほのぼの空間で。メイクしてくる社員も少なくて上下ジャージでゆでとうもろこしかじりながら出社してくる女子が風景にとけていたっけな。
华润大厦たけのこタワーが姿を現し始めたころには旧市街地はどんどん廃れて青空床屋や物乞いも見えなくなり、行くたびに10本ぐらいずつ増えるビルってどうやって作ってんの?と思ったり。お店で冷たい飲み物を頼んだら「なんでそんな冷たい物を飲むの?体に悪いよ。」ってお湯すすってた同僚が、いつのまにか氷満載のお洒落なチーズ入りのフルーツ茶をグビグビ飲み出してタワマンに住んでジム通いして車買ったり結婚したり。子猫が成猫になるスピード感で一気に変わって行った数年だったから、おそらくコロナで足が遠のいたこの2年で、深センは私の全然知らない街になっているでしょう。
Simejiのほうでは変換性能の向上とクラウド変換の変換スピード向上が当初のチャレンジで、その後はきせかえ機能の拡充にともなうキートップからの入り口追加(今では普通ですがキートップの上にUI陳列用のバーを置いて変換候補の配置と共有するという作戦は賛否両論でした)や、今でもまだ課題が残るQWERTYキーの打ちにくさ問題、ハードウエアに最適化された標準キーボードほどタイピングの速度が出てなさそうに見える問題(タップ判定範囲の微調整やフリックサイズの調整などいろんな部分をいじりました)など、あっちを直しこっちをなおししていた時代もありましたが最近ではハードの性能が爆上がったのか、こちらが処方した内容が功を奏したのか、両方だと願っていますが細かい部分に対する修正ニーズも減りました。
そのいっぽうでユーザー数の伸びに従い関わるチームの人数は増えました。いろんなバックグラウンドのメンバーがそれぞれの知見をシェアしてくれて、いろんな失敗をカバーしてくれて、少しずつ、少しずつ、時間をかけて良くなっていった結果が今のSimejiだと思っています。
ところでこうした過去の仕事について「成功してよかったね。やのさんががんばった結果だよ」と言ってもらえることがよくあるのですが(ありがとうございます。恐縮です)、私は全くそうは思いません。なんならサービスやプロダクトの開発やデザインの現場にヒーロー的な中心人物は不要だとすら思っています。
良い結果、悪くないそこそこの結果というものは、いいかんじに人々がカバーしあえて、知恵を出しあえて、お互いのハッピーのために連携できたからこそ、そこそこの運にも恵まれて、その運によって、得られるものなんじゃないでしょうか。
運かよw まあねー人生半分は運ちゃいますかな。
で、10年近く経っていたと。
私は可能な限りいつまでも何かを誰かと作って暮らしていきたいという理想を持っていまして、ふとこの区切りに両手を見つめてみたんですね。すると、いまは、なんかけっこう何にもないなあ。と思うに至りました。
まとめてみればそれなりにあるのですが、ものづくりの現場はいつでもどんどん変わって行くじゃないですか。その変化を知りたいなあ。自分のこれまでの経験を活かしつつまた自分自身も変化していきたいなあ。という欲が出まして、今では欲望のままに動いております。(ちょうど同じタイミングで「元アプリ開発者47歳@100日後に退職する47歳 (@tome_ura)」さんが転職活動してたのでちょっとドキドキした。私は2021年10月時点で48歳ですw)
11月1日からは新しい会社で心機一転Saasの開発に従事します。これからまた知恵を出し合って、現場のみなさん、なによりお客さんをハッピーにできればいいなあ。
自分の両親(お年寄り)には「お前その歳で転職するの??お前は本当に変なやつだなあwwww」とほがらかにウケたのでなんとかなるでしょう。
最後に、これまで前職で矢野およびプロダクトの開発と運用をサポートしてくださった皆さま、とりわけ心血を注いで昼夜開発に携わってくださった深センチーム、ならびに笑顔と協力を惜しげもなく与えてくださった、程代表率いるpopInの皆さま、本当にありがとうございました。そしていつもSimejiをご愛用くださっているすべてのユーザの皆さまに心よりお礼申し上げます。これからも皆さまのフィードバックが続きますように。そして良いイテレーションのサイクルが回りますよう願っております。