小学校で企画した子育てセミナーで興味深いトピックがあったので公開します。
コミュニケーションの質は「話すこと」よりも「聴くこと」のスキルが左右するというお話です。子育てだけでなく仕事上のチームワークを向上させたり、顧客とのやりとりにもあてはまりそうな内容でした。
プレゼンスキルとか日々のSNS活用で「言いたいことをうまくいう」能力にだけは注目が集まるこのごろに、「はっ」と考えさせられました。私が参加できなかったワークショップの内容をのぞいて簡単にまとめました。
---
「相手に共感しながら『聴く』能力を身につける」をテーマに、臨床心理士の宇留鷲美紀(うるわしみき)先生にご講演をいただきました。
■ 「聴く」とは自ら注意を向け積極的に話をきくこと
親は子供の話を「聞いて」いると言いつつも、子供の側からすると「親は自分の言う事をきいていない」と感じ、自分は否定されていると考えていることがよくあるそうです。ある調査によると 1 年生ではもっとも高かった自尊心が、高学年になるほど低くなるという結果もあり、親子のコミュニケーションの質については見直す必要があると先生は説明しました。また、日本の子供は他国の子供に比べて自尊心が低いという研究結果もあるそうです(日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか (光文社新書) [新書] 古荘純一:著)。
■ コミュニケーションの質は聴く側のスキルが決める
聴き手の応答や振る舞いが、話し手の心理に大きな影響を与えると言われていると説明しつつ、先生は「聴くこと」の定義を整理しました。聴く、とは
1.共感
気持ちや感情を話し手の立場に立って、感じようとする事自分の気持ちは横において相手のありのままを受け入れる(ジャッジしない)
2.応答力
話し手が、聞き手の理解が得られたと実感できることまた、子供にとって「聴いてもらうこと」は以下の効果があると話しました。
・ 子供が自分を理解してくれる人がいるという安心感をもつことができて、心のエネルギーを満タンにできる
・ 子供の昇華できない複雑な気持ちを言葉にすることができる
・ 子供が自分の気持ちを客観的に振り返ることができる
・ 子供の内面の経験を認めることができる
■ 聴くことの難しさ
また、先生は聴くことを難しくする状況について分かりやすく説明しました。 共感しながら聴くことができない状態の特徴
・ 世界を色眼鏡で見ている。(あなたはこうでしょう。という考えを先に言ってしまう)
・ 自分の経験値でものをみる。自分の価値基準を子供に押し付ける
・ 最初からこどもにレッテルを貼ってそのレッテルの範囲ですべてを片付ける
・ 言葉だけに注目して子供が本当に何を言いたいのか理解しない(子供はまだ語彙が豊富でない)
・ そもそも忙しくて話を聴く余裕がない
応答力がない状態の特徴
・ 指示やどうすべきかに注目し、子供の気持ちに注目する事を忘れる
・ 子供の気持ちを理解できたことを伝える方法を知らない
■ まとめ
宇留鷲先生は、子供より経験値が高く、また、自分の子供を常に大切に思う親が自分の理解や知覚を押し付けがちなのはしかたがなく、本当は子育て経験のなかで子供の気持ちもわからないはずがないと言います。ただ、コミュニケーションの難しさを自覚し、意識的に相手の立場に立つことで、問題が克服できるという示唆をくださいました。
「相手の立場に立ってコミュニケーションをすることは最初は難しいでしょう。しかし数週間ちょっと気をつけていると、相手の気持ちを受け止めずにはいられなくなるようになるものです。」と、話し、その下地として「いつも心に余裕を持つヒント」を最後に説明しました。
いつも心に余裕を持つヒント
・ アナタ自身の声を聞いてみてください
・ そして、それをそのまま受け入れてください
まず、自分自身の正直な気持ちを認めることから始め、相手の気持ちも認められるようになろうと提案して締めくくりました。
仕事上で問題を解決することに慣れていると、うっかり子供にたいしても次々と解決策を提示して上司のように振る舞ってしまったり、飲み屋のねーちゃんのようにたいして聴いてるわけでもないのに「そんなこともあるよー!ガンバ!」みたいに終わらそうとしたりしたことは身に覚えがあります。
単によく聴く。ということがだいじだと肝に銘じ、意識して共感することで子供には適度な自尊心をはぐくんでもらいたいと思います。