2012/05/16

全然エロくなかったわロマンスX

ポルノコーナーに入れられているのですが、映画好きの人だとそのうち見ようリストに入っているはずのタイトルです。カトリーヌ・ブレイヤ(女性)監督の1999年の作品で、一般的な映画でありながらセックスシーンが本番。という役者に設定したハードルの高さが当時話題でした。 

あらすじを簡単に示すと、恋人の男にセックスを拒否され性的欲求が不満になった女性が恋人以外にはけ口を見いだしながらもセックスに対する理想と現実のズレに苦悩しつつ、お母さんになる。というお話です。 筋だけだとやっぱりエロっぽいですが、実際観ると女性側から表現した「セックス」という行為がすごい酷。というか男性が一方的に興奮しているという演出が「こわいがな」という印象さえ与える感じです。ポルノ的な演出とか設定を一切伴わない他人のセックスを覗いてみたら案外こんなふうなのかもしれないなー。という印象さえありました。

 この映画が伝えたかったことはとてもたくさんあるでしょうが、根幹にはおそらく「女が理想とするセックスと男が理想とするセックスの方向性が違いすぎて話にならんのでは」という仮説の提唱があるでしょう。 白く純粋無垢な下着でベッドに横たわっている時、男がその純粋に対し頭を垂れて「どうか抱かせてください」と頼みにくる、来てしかるべきである。というのが女側の妄想であり欲求です。 ところが男の側ではそんなことこれっぽっちも受け入れるつもりは無く、むしろ下着は黒の女が抱いてくださいと跪いてくる方向に興奮するのが自然だったりします。 この矛盾は他人同士なら「あるよねー。あるあるー」で話題にもできるでしょうが、恋人同士だったり夫婦だったりしたとたんに大問題になりがちです。こうした間柄では相手に理想を飲ますことを目指しがち。特に頭がいいカップルだと互いにしっかりした理想を持っていたりするので「こっちの理想を貫けなきゃ負けだ」となり、結果的に意地の張りあいになるでしょう。 

この監督は相当なフェミニストなのでしょうが、結果的に「男なんかクソよ!」的な方向に話が進んでいきます。最後は「女性最大の敗北」という位置付けであろう厳しい出産シーンで終わります。 わたしなんぞは、そんな闘争心むき出しにせんでも..と途中で諌めたくなること多々ありましたが、大変興味深い点もありました。それは女性の妄想を受け止めて甘えさせてくれる唯一の存在としての緊縛老人(浮気相手の一人)です。おじいちゃんは彼女の個性や「本当にしてほしいこと」にゆっくり耳を傾けつつ、丁寧に縛り上げては「きれいだねえ」とほめてあげるのでした。 

しかしお互いがお互いの妄想を胸に「奉仕しろや」と言い合っていては1ミリも前に進まないではないかー。とおもいます。 セックスはクリエーティブなお楽しみだ!くらいにとらえて、もう、こうあんま深刻にならず、さらっとこう、笑いながらやっていこうや!バーン。と、誰かの肩を叩きたくなる。そんな作品でしたわ。