2008年12月14日まで、上野の東京都美術館で「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」が開催中。
メジャー級画家ながら全世界に30点そこそこしか存在しないといわれているフェルメール作品が7点も集結。さらにオランダ絵画の黄金期を飾ったデルフト絵画(ジャンル名)も多数出展ということで観てきた。
いやー。フェルメールは超絶ド変態だよ。
前半、他の著名な画家による作品もいっぱい観られるんだが、中盤のフェルメール作品の格が違いすぎて、他の作品がオレには単なる図版にみえるぜ。たぶん草葉の陰で「おいおいフェルメールといっしょにならべんなよ!」と突っ込んでいたにちがいない。
まず色が怖い。何をやっているのか正確にはわからんが、下地作りに猛烈な手間をかけているように思う。さらにおかしいのは、描画対象を包む光と空気の色が描けてしまっている点だ。物質として肉眼で確認しにくいものが描けているというのはどういうことかというと、絵を構成する色の粒子1粒1粒のトーンの移り変わりがあまりにも自然。ということだ。絵は筆で描くものだから当然「面」で構成されるはずである。フェルメール作品も、ぎりぎりまで近寄ってにらめば筆あとは見える。が、キャンバスの対角線の3倍くらい離れると、あっというまに筆あとは認識できなくなり、空気と光がみえてきてしまうのだ。これはおそらく絵の具と下地のせいだ。
入念な下処理をおこなったキャンバスのうえに、それ自身が光沢を持っているような、特殊な絵の具をのせることで、全体のトーンが統一される。そういうからくりであろう。Photoshopだとレイヤーモードを乗算にしてオブジェクトをのっけると背景とオブジェクトは馴染みますね。同じようなことを物理的にやってのけている感じだ。
何やってんだよ!
しかも乗算かけたオブジェクトそのものの輝度も保持されているので、シルクのドレスなんかつるっつるよ。
ガラスなんか、きらっきらよ。
あんた、たいがいフォトショッパーね!
そのうえ、多分かなりのドMだったと見る。描画の難易度を極限まで上げてるし。背景に超絶細かい地図とか入れてるし。イラレで描いてフォトショで貼ってないか?ほんとは「うわーきっつー」とか思いながら描いてただろうが!
水彩なんかだと乗算されるのは当然なんだけど、乗算結果を緻密にコントロールするのは既存の絵の具じゃちょっと無理では?
あとで少し調べたら、どうやら絵の具に鉱物を調合するのを得意としたらしい。特にラピスラズリを砕いて使ったというのは有名だとか。
確かに産業革命ごろまでは店で絵の具売ってないから基本手作り。でもね。だとしたらよ。表現の方向性に合致した絵の具が、自分自身の手で開発できるかどうかからして、すでに絵描きの腕前をわけてしまうってことだ。画家は筆を持つ前に、水酸化鉄とか硫化水銀なんかをこねくり倒して何度もテストしては色をモノにしていたといいうことですわ。
絵の具を発明しないといけないのか。買ってきたのでうまく描こうと思っていたティーンのわたしはアホだな。
やっぱりなあ。エレメントを開発するってことが歴史に名を残すってことなんだな。という動かしがたい事実に触れた、上野の秋。