バンコクに住んでいたとき、週に1度くらいのペースで
知らない人から電話がかかってきた。
電話に出ると、きまって
「ホセ?」
と尋ねてくる。
ホセかー。ホセなあ。
「ノー。アイムノット、ホセ。」
と返す。しかし電話の向こうはどうもスペイン語圏?らしい。
続けて何か尋ねているが、残念ながらぜんぜんわかんないです。
想像するに
「とうちゃん。ホセじゃないみたいだよ。お手伝いさんかしら。どうも、言葉もわかんないみたいなんだよ。どうしようか」
「しかたねえや。じゃあまた電話してみれや。本人が居るときもあんだろうよ。がちゃ。」
フーイズ、ホセ?などと返してみても、英語はからっきしだめなようだ。いつも途中で切られてしまう。
でも定期的にかけてきては「ホセ?」と言っていた。
かけてきてんの同一人物かなあ。ホセはどこにいったんだろうねえ。
家族の人かしら。
などと、ホセ電が来るたんびに家のものと話していたものだ。
んである日、昼間なんとなく家でだらだらしてたらドアのベルが鳴ったんで、掃除の誰かか?と思って「カー(一応タイ語)」とか言って開けたらば。
「ホセ?」
来たよ。電話の人来ちゃったよ。
ふくよかで髪の赤いラテン系のおばちゃんが二人。戸惑いの笑顔で戸口に立ってるよ・・。
「ノー。アイムノットホセ。ヒヤイズジャパニーズファミリーズホーム。ジャポネ。ジャパン。ヤーパン、イープン。ユノウ?ソーリー、ソーリー。」
と、とにかく違うんだよ。ということを必死に顔で表現すると、おばちゃんはとても悲しそうな顔をして下を向いてしまったが、
「オーケー。」
と言って帰って行った。
どっから来たんだろう。
んで、ホセ。どこいっちゃったんだろう。
あの人ホセのかあちゃんだったのかなあ。
ホセ・・。今頃家に帰ってかなあ。
と、今でもホセのことをたまに思うのである。
ホセよ、帰れよ(自宅に)。