2009/07/31

大雪山系、WEBデザインメソッド


WEBデザインメソッド, originally uploaded by yano rin.

2009年8月3日の発売を前に、神々の庭と呼ばれる北海道大雪山系旭岳の裾野へ出版報告しにいく。
写真は旭川の方向に本書を差し出す姪っ子(中学生)。
写真の露光量がちょっと足りていませんが、曇り空のリアル感を尊重して補正しませんでした。
晴天の高所ならではの恐怖の群青をお見せできず大変残念。

さて、ここ旭岳ですが、登山というわけではなく動力を使うことによってだれでもパノラミックランドスケープが楽しめるすてきな国立公園です。車で入山ポイントまで行き、五合目までロープウエイに乗ればよいのです。小1時間ほど高山植物を眺めながらお散歩気分で山頂が見えるポイントまで行くと、登山気分は十分満喫できます。
が、しかし、散策道は素人を拒む本気の登山道につながっています。
ちなみに先日10名もの人々が犠牲になった山での事故の入り口はここ。通るには知識と装備と体力と情報が求められます。

プロの道をゆく条件は、どんなジャンルでもそれほど変わらないのですね。

2009/07/27

WEBデザインメソッド-伝わるコンテンツのための理論と実践

新刊書籍のおしらせです。
WEBデザインメソッド-伝わるコンテンツのための理論と実践
がワークスコーポレーションより発売されます。
「改めて学ぶ、WEBビジュアルデザインの鉄則をまとめよう」というテーマに基づいて執筆いたしました。

ここさいきん、デザインという言葉が使われる機会はほんとうにふえました。
このデザインという言葉ですが、「ものづくり」という現場で使うばあい、じっさいに現場で行われる実務内容はなんでしょうか。
設計作業か。何はなくとも、お絵かきか。
どちらもデザインという作業においては欠かせない実務です。
とくに設計に関する作業の重要性は近年でもっとも注目すべき点ですから、このあたりの理論書は増えているようにおもいます。
しかしながら、お絵かきの分野、見た目のデザイン(ヨーロッパ風にいうとスタイリング)についてはどうでしょう。
矢野は、あまり詳しいものがないように感じていました。

ではひとつ、つくろううではないか。
というのが本書を執筆した動機です。

しかし、頭から読むと、インタラクションデザインとは何か、とか、設計とは何をすることか、といったようなやや抽象的な解説にであうこともあります。
それはビジュアルデザインには関係ないではないか。と、思われるかもしれません。
ところがここははずせない部分です。ビジュアルデザインを担当する場合、なんのためのビジュアルなのか、ということを理解する必要があります。とくに読者が学生であれば、この点に関する理解は不可欠です。
そこで、あるていど抽象的な内容も含むということを、ここに述べておきます。

カラーリングをはじめ、タイポグラフィから、画像解像度まで、ビジュアル担当者が知っておくべきセオリーの数々を、ぎゅっと1冊にまとめておりますので、どうぞワークスコーポレーションのサイトなどから見本のページをごらんになってください
みなさまのお役に立てることをこころより願っております!

2009/07/25

CSS Nite LP, Disk 7「IAスペシャル」

わたしの場合、インフォメーションアーキテクチャに興味はあるが、なんか仕事にとりいれるかんどころがよくわかりません。
そんなわたしに朗報。IAの有識者が一堂に会するイベントが開催されます。

2009年9月12日土よう、13:00スタートのCSS Nite LP, Disk 7「IAスペシャル」は、
インフォメーションアーキテクチャを仕事にとりいれる具体的な方法から、取り入れた場合、こうなるといった事例の紹介、ワークショップ風の思考トレーニングなどを、体験することができます。

出演者は

IA界最大にして最強の貴公子、長谷川敦士(コンセント)
得意技は企画からデザインへの落とし込み、坂本貴史(ネットイヤーグループ)
ガジェット大好き!佐藤伸哉
美しきプロジェクトマネージャー、林 千晶(ロフトワーク)
あらゆる概念の敷居を下げる男、長谷川恭久(could)
アーキテクツから、アーキテクツへ。小久保浩大郎(iA)

の皆さんです。
楽しみ!

2009/07/19

エンタメ:ポケモン映画 アルセウス超克の時空へ

子供にせがまれ、はじめてポケモンの映画に行った。
劇場は開場時刻前から大混雑。小学生くらいの子はDSを持参している。来場し、かつ最新のDSソフトを持っていると「アルセウス」のポケモンをくれるんだって。さらにポケモンカードと、アーケードゲーム「ポケモンバトリオ」で使うアルセウスのパック(メダルのようなかたち)もついてくる。
さて開場。開始まで15分間延々協力企業の関連事業(仮面ライダー、シンケンジャー、ドラえもんなどなど)の宣伝が続き、最後に(DSを閉じろ)とポケモンの「ニャース」からご連絡。はい、始まりました。
で。終わりました。

ニャースがまた出てきて(DSを付けてもよい)という趣旨の連絡が出ておしまい。
公開開始直後なので筋は説明しないが、ひでー映画だった。
ストーリーの底が浅いとか、もったいぶってて冗長とか色々あるが、最も気になるポイントは「主人公を始め登場人物全員がまったく努力をしたように思われないにも関わらず、事が解決する」ところだ。
今回の映画のキーパーソンなんか、要所要所で念じるだけ。もういちど言う。念じるだけ。そんで全部片付きます。ノーリーズン、エンジョイ。
で、DS持ったがきんちょは「オレ最強のポケモンゲットした〜」と言って満足して帰ると。ポケモンゲームが主で映画は付録、と考えれば、映画としてまじめに観るのは間違っているのかもしれないが。

その後、バトリオのパックもらったせいで「どうしてもいちどやってみたい」と息子がゴネだし、駅前のおもちゃ屋へ。説明書きを読んでもさっぱりやり方がわからんわ。と思っていたらさっき映画館で後ろに座ってた小学生らが「おれわかりますよ」と。「おい、金」と母親に言いつけて100円入れたかと思うとやりだした。「ここで、押すんですよ。すげー押す押すおらおらおらおらああああ!!奇跡を起こすぜええええ!!いえーい100ごえ〜おれ最強、無敵〜〜」あ、ごめん、押すだけなの?押せば良いの?「そうですけど、オレくらいですよ。だいたい100とか超えるのって。」え?100超える条件は?「気合いっすね」え、気合い?気合い感知?

画面切替の合間にもDSを覗き込み、鬼の形相でただボタンを叩きまくる子供を見ていると、理解を超えたしくみの前に奇跡だけを信じて金をすっていくパチンコ狂いのおっさんが思い起こされ、悲しくなった。
ポケモンのルールというか、しばり的な考え方は、どうやら陰陽五行思想の木火土金水(もくかどごんすい)風な構造を取ってるようだが、なんせ大勝ちする時とか、強いアイテム(ポケモン)を手にするといった圧倒的カタルシスをもたらすイベントがぜんぶルールの外、つまりランダムで、自動的に与えられるしくみになっているために、ガキどもは「奇跡」とか「気合い」とか「運」を信じてゲームに向うことになっとる。

待てやコラ。これ作った奴、賭博黙示録カイジを1章から2章まで通読しろ。
勝ち方がはっきりしないゲームは子供にとって害だろう。
もうおもちゃ屋のわきで静かにぶちキレた私はその場をあとにした。
歩きながら息子に、勝ち方がわからないゲームはするな。奇跡はそう簡単に起こらん。まして、ボタン連射で奇跡が起こると信じるヤツはバカだ。こんなことに100円なんか使うな。と言い渡した。息子は「母親は子供の喜ぶことをしてくれるもんじゃないの?変な母親。」と言い返したが上等だ。子供の銭を巻き上げる商売だってべつに法に触れてなければまっとうである。だがしかし、支払った対価として心になあーんの豊かさも与えず、教えもなく、物欲を煽るだけ。かあさんそんなポケモンなんか、だいきらいよ。
まだディズニーのほうがうまくできてるわい。

2009/07/16

イベント:Remix Tokyo 09 川崎和男先生

今日はマイクロソフトのRemix Tokyo 09、基調講演を拝見して参りました。
演出過多なイベントでは、なんだかちょっぴりお寒い印象もあるMSさんでしたが、今回は音響も映像も、舞台装置の効果も、とても板についていました。
オープニングではデベロッパー プラットフォーム コーポレート バイスプレジデントのスコット・ガスリーさんが、氣志團万博のオープニング映像顔負けのコントを制作、上映。掴みはOKで温かい拍手のなか、さっそうと登場していました。
なんといっても今回の目玉はやはり「MSのイベントに川崎和男先生降臨」です。
ガスリーさんからの紹介で登壇した川崎先生は、無言のまま約4分にもおよぶ先生のプロモーションビデオを上映しました。
マイケルの(というかストリーミング放送の都合上、マイケルの声に似た違う人がうたっていた)Beat Itにのせ、先生の功績が次々に紹介されていきます。先生はご自分が「アウェイ」であることをよく理解していらっしゃるのです。医学博士であり工業デザイナである先生は、いつでも世界を外からご覧になれる知性を持っているのだな、と、あらためてあこがれます。
自己紹介が終わると先生は「これからコンピュータが消える日の話をします」と言いました。OS競合という経済呪縛の終焉による解放と、OSとwifiの融合、Not Contents, Context Procedure designの3つのキーワード。これがこれからのウェブやアプリケーションのありかたを変える、というお話です。
じつはこうした思想はすでに、
Gordon Moore
Paul Vixie
William J. Mitchell
という3人のデジタルキーマンによってずっと昔、予知されていたことだと先生は言います。デジタルメディアの制作に関わるプロであるなら、当然この3人の著書くらいはよんでおかなければなりません。と、くぎをさしながら、いつでも接続可能なネットワークのうえにあるオペレーションシステムが存在すればこそ、アプリケーションの既成概念が変化し、コンピューターがインビジブルになるのは当然のことなのだよ。と述べました。
我が日本アンドロイドの会の丸山先生もおりにふれ、ムーアの法則やトランジスタの歴史について話してくださいますが、どちらの先生も「当然の帰結」というふうにここ最近のお話をするところをみると、やはり、過去に始まった1つの流れについて終わりが近づいていて、同時に新しいはじまりがおこるタイミングなのだと感じざるを得ません。
さらに川崎先生は「意識社会」「情報、おしらせごと」「策略」が、クラウド型の世界でウェブが進化する先を見越すためのカギだと説明します。
コンテンツ、ではなくて、コンテクストを作る手続きのデザインが、これからのデザインなんだよ、と。さらに、今年の秋にも、もうディスプレーは要らなくなって、キーボードだって消えてしまうんだよ。と断言しました。それくらいのスピードで、変化は近づいているんだよ。と。
わたしはすっかり感化されて、先生が壇上で紹介した書籍を夏の間に読もうとわくわくしたのでした。
そして、そのあと登場した春日井さんまでがいつもの5割増しでハンサムに見えたのです。
本当です。
これも1つのUXでしょうか。

自分自身、意思、願いを持つことと、自分以外のひとの願いに思いを馳せることとか、だいじなんだなあ。と思いました。

William J. Mitchell
シティ・オブ・ビット―情報革命は都市・建築をどうかえるか
サイボーグ化する私とネットワーク化する世界

2009/07/14

本:原色日本蝶類図鑑

夏は、虫のなまえを調べる機会の多い季節であります。
夏は虫。ということで、古本屋で購入した横山光夫の原色日本蝶類図鑑を、時間があくとしらべものがなくても読んでおります。
蝶好きな人なら常識でしょうが、黒く大きなアゲハチョウはみな一様に「カラスアゲハ」というわけではないんですね。おながちょう、みやまからすあげは、など、数種類があります。
とくに「じゃこうあげは」という種類は尾がながく、羽の形が複雑で迫力があります。そんなじゃこうあげはの本書の解説が凄い。以下抜粋。

長い尾状突起を振りながら、そよかぜにのって緩慢に、樹間や路傍の花上を舞う姿は「山女郎」の名のごとく、絵のような、美しさである。
<中略>
蛹は「お菊虫」と呼ばれ、後ろ手に縛された姿にも似て「口紅」に似た赤い斑点さえもひとしお可憐である。

じゃこうあげは、別名、じょろうあげはの説明であります。
女郎とは、美しい女性全般を指しますが、ここではもっとこう、関わったが最後道を踏み外しそうな、圧倒的性の芳香を放つことばになっています。
蛹のくだりにある束縛された女の姿と合わせると、ほとんど谷崎潤一郎の世界です。

山から降りてきた1頭の蝶にひもづく情報量が、その蝶を見た人間の感性によってこれほどまで大きく増幅するものか。
ことばの個性とは、やはり、世界をみる心の個性そのものなのでしょう。
しかし心の個性って、いったいなんでしょうか。自分にとって何が大切かをよく知っているってことでしょうか。