2009/09/13

css nite LP7 IA特集 終了しました

参加者ならびに関係者のみなさま、長時間おつかれさまでした!お手伝いの矢野です。途中息子がステージ裏をうろついたりパネルの直前でステージを横切るなど失礼をいたしましたこと、おわびいたします。また、子供に指導しながら受け入れてくださった鷹野さんをはじめみなさま、本当にありがとうございました。次は私がお世話をさせていただく番と心に誓っております。

それぞれのセッションに関する印象など!

長谷川敦士(コンセント)
情報アーキテクチャの全体像〜ワークフローとケーススタディ〜

IAという作業の中身や、その目的、実際の案件などを網羅的に解説した内容でした。矢野が初めて氏の考えに触れたのは2001年くらいでしたが、長谷川さんの主張にはいつも一貫性があります。ノウハウに落とし込んだ指針は、むしろ使い物にならない。という考え方です。おそらく長谷川さん的にIAとは発想ややるべきことを整理したり、他者とその計画を共有するための指針以上の意味を持たないのでしょう。氏は指針を手にいつでもまっさらな気持ちで相手(顧客とか)の状況を受け止め、最善の方法を泥臭く試行錯誤する。その準備がある。ということが氏にとってのIAという知識なんだろうなあ。と、セッションを通じてあらためて感じました。IAは愛という言葉から、氏の「ソリューションに依存させるのでなく、お互い自律的に繁栄をめざせるような関係を築くこと」という意味を汲み取りました。

林 千晶(株式会社ロフトワーク)
プロジェクトマネジメントから見たIAの大切さ

他人のビジネスを他人の目線で支える。という「仕切り作業」のなかのIAの重要性を説きつつ、IAという存在に重みを持たせる内容でした。
目的と目標の設定。という言ってみれば発注者側が自分自身で設定できなければどうしようもなさそうな事柄を、相手のふところに入り込んで引き出してあげる作業はまるでカウンセラーです。また、そういう作業に必要以上にべったり注力せず、ある程度妥当な目標が立ったところでツールや標準的なプロセスを駆使して怒濤のように作業を収束に持っていく。そんな林さんの走り方にはIAという地図が必須なんですね。
たしかに、台割(書籍の章立てと、章ごとについやすページ数の内訳表。書籍の設計図にあたる)がない執筆作業って、進まないもんなあ。と妙に納得しました。

佐藤 伸哉
IAの欠点〜IAの本来の目的と役目

ドキュメントとしての成果物を生み出すことに、こだわってはいけないよ。というメッセージが随所にちりばめられたセッションでした。
長谷川さん同様、セオリーにしない、ドグマ化しない設計という思想の持ち方について語った内容だったのではないでしょうか。佐藤さんの場合、よりタスクに寄ってそれらを解説しているという面で具体的な像が描きやすいという差別化がなされていました。
とくに、ワイヤーフレームやサイトマップという2大成果物についても、別に必須というわけではなく、あくまで相手(発注側)がわかりやすく、安心できればなんだっていいんだ。とはっきりおっしゃっていたのが印象的です。
アプリケーション構築の場合も、開発に関わる人数やプログラマの能力(天才的な人なら発想だけで最後まで図面なしで行きます)により必要な手続き図や構造図はかわるものですよね。IAという作業を型にはめるようなことは考えまいと肝に銘じました。

坂本 貴史(ネットイヤーグループ株式会社)
IAワークショップ〜LPOをテーマに〜

ワークのみで1時間の濃密なセッション。最初は結構課題が難しかったのでどうなることか!と思いましたが、最後までがんばって集中していたら、ちょっとした問題発見から情報整理、さらに情報整理がUIの設計にまでつるっと1本の線の上につながっていく様子がよーくわかる、驚きのあるセッションでした。
そのつるりとつながる感じがあまりにもあたりまえ、というか、自分自身難しく感じていた部分が多かったためか、あっさりしていてほっとしました。
なんか、ああ、自分がいままでやっていた方法は、間違いではなかった。ただ、自覚が足りなかっただけなんだな。と自信を持たせてもらったような気分です。
しかも最後にLPOという視点まで腑に落ちるという状態になっていたのはよかったです。坂本さんのキャラ的には、どや、こんなんむずかしーかんがえてもしゃーないやろ?と、言ってもらった感じでしょうか。

小久保 浩大郎
実装視点からのボトムアップIA

IAのみならず、建築やデザイン全般の本質を語ると哲学的になってしまうことはしかたがないことです。しかし、そのように形而上的な話題に終始すると、生活に行き詰まることがあるのもまた事実でしょう。
小久保さんのセッションでは、実務の中でも多くを占めるコーディングを中心とした話題でした。IAという視点を持ちながらHTMLをみると、HTMLそのものが持っている設計思想にはいつも驚かされますよね。よくできているなあ、と。そういう感覚はとくにDOMという概念に触れるとまきおこるわけですが、それを実務と結びつけて説明するのは面倒というか、難易度が高いことです。それを今回小久保浩大郎がやってのけたな。という感想を持ちました。

長谷川 恭久
IAからWebサイトデザインへの突破口

IAという指針は、ウェブの制作のどのパートを担当していようとも必要である。というメッセージはセッション全体を通して共通に語られていたことのように思います。しかしながら心のどこかでは、その必然性に対して「?」という気もしないでもない。と、セッションの後半に及んでも思っていた人は多いのではないでしょうか。私を含めて。しかし、その「?」を払拭したのが長谷川恭久だったという人もまた、多いはずです。コミュニケーションスキルの1種だ。と定義付けられると、頷かざるを得ません。ウェブの主成分は言葉(自然言語)です。で、自然言語ほど相手の能力とバックグラウンドにその解釈を曲げられるものもありません。そんなずれずれでぶれぶれの世界をつなげるのは、長谷川恭久が言うようにIAと、そしておもいやりしかないのだな。と良いシメになりました。

以上、駆け足ですが矢野の印象でございました!